本プロジェクトでは5つの研究室が緊密に協力しながらナノエネルギーシステム創生の研究を進めています。主な研究分野は以下のとおりです。

1) マイクロ振動発電、マイクロ熱起電力発電、マイクロ爆轟燃焼発電(桑野研究室)

マイクロ振動発電とは環境中に存在する振動を利用して電力に変換するものです。振動から電気エネルギーに変換するデバイスとして、現在ピエゾ素子、エレクトレット素子、電磁素子を用いた3つの方法を研究しています。さらに、広帯域の環境振動から効率よく発電するインテリジェントな発電手法を研究しています。

マイクロ熱電発電プロジェクトでは、薄膜プロセスや微細加工技術を用いた次世代型マイクロ熱電発電素子の高効率化に不可欠なスムーズな熱流(輻射、熱伝導)を実現するための表面形状・材質の最適化技術の確立を目指しています。また屋外で利用する薄膜太陽電池の効率を高めるための光閉じ込め構造や損失低減のための放熱技術の研究も進めています。

マイクロ爆轟燃焼発電プロジェクトでは、燃焼効率の高い爆轟波を利用することで、小型・高効率のエンジン、発電システムの開発を目指します。小型化に有利な凝縮系の爆薬を燃料として利用し、微小な爆轟をきめ細かくコントロールして、連続的な運転が出来るシステムを研究しています。

2) バイオ燃料電池(西澤研究室)

酵素を電極触媒とするバイオ燃料電池の研究をしています。ジュースなどの身近な溶液を、そのまま燃料溶液にできますし、電池全体が無害な有機物で構成できるので、真に使い捨て可能な環境にやさしい電池、極端に言うと「食べても安全」な小型電池を開発しています。

 「小型で安全」というバイオ燃料電池の特徴が活きる応用領域のひとつは医療です。特に体液(血液や組織液など)から発電する埋め込み電源としての利用で、血液中のグルコース濃度から推算した電池出力は、バイオセンサなどを駆動するのに十分な値と見積もられています。耐久性など、克服すべき困難な問題が多い現状ですが、環境や生体に融合し得る超安全電源としての可能性に魅せられて取り組んでいます。

3) ナノエネルギー新材料(折茂研究室(金属材料研究所))

主要テーマは、将来の水素社会を支える基盤材料としての高密素水素貯蔵材料の開発であり、軽量金属元素や特異なナノ構造を有する新たな水素化物群を創製するとともに、最先端の原子・電子構造解析やマイクロ波プロセスなどを駆使した多面的な材料開発を進めています。また、水素貯蔵材料に加えて、ニッケル‐水素電池材料中性子遮蔽材料、更にはリチウム超イオン伝導材料、などの水素化物のエネルギー利用に関する多様な研究領域を開拓しています。現在、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)での水素貯蔵材料研究プログラムなどにも参画して国際的なネットワークも広げながら、学術的な基盤研究から産学共同での応用研究まで、鋭意取り組んでいます。

4) ナノ材料サーミオニック発電(小野研究室)

ナノ材料からの熱電子放出を利用した発電の研究を行っています。廃熱などを利用し、ナノ材料からなるエミッタを加熱し、放出される熱電子をコレクタ電極に流して熱から電気への変換をおこなう素子を開発しています。ナノ材料先端での電界集中、およびエミッタとコレクタ間のギャップを小さくして高効率な発電を目指しています。ナノ材料としてはカーボンナノチューブなどを用います。

5) マイクロ燃料電池(田中研究室)

マイクロ燃料電池は携帯情報機器の未来のパワー源として期待されています。これは、既存の電池がエネルギー密度の理論限界に近付きつつあるのに対して、燃料電池は既存電池の数倍以上の高いエネルギー密度を実現する可能性を有しているからです。また、燃料電池を採用することによって、時間のかかる充電が不要になり、しかもリサイクルが難しい上、環境汚染の原因になりうる使用済電池の削減に繋がることも重要です。

マイクロ燃料電池の実用化への最大の課題は出力密度の向上です。現在のマイクロ燃料電池は、出力密度が低く、そのため必要な出力を得るのに大きくなり、結果的に燃料を搭載する場所が少なくなり、その高エネルギー密度という特長を生かせていません。マイクロ燃料電池の高出力密度化のため、水素を発生するマイクロリアクタ、高出力密度を実現できるマイクロSOFC(solid oxide fuel cell)、およびそれらの断熱技術を研究しています。マイクロリアクタ、およびマイクロSOFCの実現には、機能性材料の堆積技術や微細加工技術も重要であり、これらの研究も行っています。

上記の「要素技術」の開発が進んだ段階で、それらを効率よく利用する「ナノエネルギーシステムの最適化」の研究に将来進みます。

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